−世界征服の仕方−

「ああー桜井さんじゃん」
「ああーショウじゃん」
「どうしたの?珍しいね。ここで会うなんて」
「だね。桜井さん、あれでしょ、今、トイレ行きたいでしょ」
「いや、いまはそうでもない」
「へぇー、宇宙一トイレが近い男らしくないですね」
「いや、宇宙っていうわけにはね」
「そうね、宇宙ってのはね。ちょっと話がダイナミックというか遠大というかね」
「そうそう。そうだよ。それでさー、あのーショウさー最近アレはまってるんでしょ?」
「いや、え、あれって?」
「あれだよ、ほら、なんだっけ、せ・・せ・・」
「あー、世界征服ね。うん。」
「そうそれ。どうなの、それ以降。」
「いやーねー、難しいわあれは。ホントに。」
「でしょー。俺もやろうとしたけどだめだった」
「あー、ミスター桜井もやろうとしたんだ。」
「まぁね。でもねーやっぱ初期段階でね。資金とかね」
「あー、ミスター桜井の家ってあれだよね、陸の孤島って感じだもんね」
「俺の?え、俺のあの家をそう言うの?」
「そうそう。そんな感じ。なんか仙人が住むみたいな山でしょ、あれは」
「そうかなー」
「いや、そうだよ。あれでしょ?だって解脱目指してるんでしょ?」
「解脱ね。ああ解脱。うーん。」
「解脱型社会ね」
「いや、なにそれ?」
「みんな解脱するのが理想みたいな」
「えーなんかそれってなんだろ、なんかいいのかなー」
「いや、いいんだよ別に。ただの言葉だから。」
「言葉ね。言葉ね。うん、言葉ってすごいよね」
「いや、すごいって言えばやっぱ桜井理論だよ、あれはすごいって」
「うーん。ダイナミックだよね」
「そう。だってあの理論によれば桜井さんもウンコも一緒だもんね」
「いや、ウンコって・・・」
「いや、まぁウンコね」
「まぁね。」
「桜井さん、しかも初期のころのダスティンホフマンにそっくりだよねー」
「いや、それなんか関係あるの?今の話題と。」
「いや、ないよ。いいたかっただけ」
「あっそう。」
「ところでさぁ、まぁ、こう考えたら世界征服できたようなもんだよね」
「こうってどう?」
「いや、こう」
「え?どう?」
「いや、だから右手をこう」
「え?右手?」
「うん。そして左足をこう」
「え?そっち?」
「そうだよ。それから右まつげをこうやって」
「いや、ちょっと待って。はやい。」
「いや、待たない。で、それから右玉をこうやって」
「え?右玉って?」
「で、それから左毛をこうして
「いや、ちょちょちょちょ待ってよ、右玉とか左毛って何?」
「なにって、それは口では言えないけどさ」
「えー、そういうことなの」
「うん。概念が言葉を超えてるの」
「あー、そういう意味で。」
「そうだよ。桜井さん、あのー、変なこと考えてたでしょ」
「うん。ショウの説明っていつもわかりづらいから」
「あー、それわかる。そうね・・・。ええ!そうなの?」
「うん。」
「ふーん」
「そう」
「いや、でも桜井さん、トイレが30秒間隔なくせに」
「いや、30秒ってことはないでしょ。ありえないよ」
「あ、ありえないよって言った。そんないまどきの若者みたいな言葉使っちゃって」
「あーごめん」
「ありえないよってあれだよ、全否定だよ。もう全否定。」
「ね。すごい威力だね。」
「そうだよ。お前の存在ありえないよって言われた暁には生きていけないね」
「だろうね」
「桜井さん、次授業?」
「そう、あ、時間ないわ。行かなきゃ」
「ありゃ」
「ショウは?」
「俺はこれから毎週恒例独りカラオケ」
「よく行くよねー、一人で。はずかしいけどね。普通。」
「いや、羞恥心はフィクションだから」
「ああ、ショウそれよく言うよね。じゃあバイバイ」
「バイバーイ」

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